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遺跡に満ちた世界は古代ギリシャとどうリンクする?―藤村シシンさんが見る、スイッチ版『那由多の軌跡』に散らばる“歴史的エッセンス”とは

5月26日より日本ファルコムよりニンテンドースイッチ向けに発売される『那由多の軌跡 アド・アストラ』。それを記念し、古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家としてゲーマーにもよく知られる藤村シシンさんへ、本作を遊んでいただきつつお話を伺いました。

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遺跡に満ちた世界は古代ギリシャとどうリンクする?―藤村シシンさんが見る、スイッチ版『那由多の軌跡』に散らばる“歴史的エッセンス”とは
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日本ファルコムがおくる人気ストーリーRPG「軌跡」シリーズ。同シリーズ中でも屈指の意欲作として知られ、アクションRPG要素を取り入れた『那由多の軌跡』が、ニンテンドースイッチ移植版『那由多の軌跡 アド・アストラ』として2022年5月26日に発売となります。

そんな本作をより深く楽しむべく、インサイドでは昨今ゲーマーからもよく知られる古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家の藤村シシンさんをお招きし、同氏の専門領域に通じるエッセンスが『那由多の軌跡』にも散りばめられているのか、インタビューを実施しました。

藤村シシンさんは「軌跡」シリーズのなかでも、少し特殊な立ち位置にある本作をどのように見たのか。実際にプレイもしてもらったその様子をお届けしましょう。

・藤村シシン

古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。
高校の時にアニメ『聖闘士星矢』に熱中し、以来古代ギリシャ史の世界に。

専門は歴史学。神話、遺跡、文学、魔術、服飾など文化史メイン。
NHK講座講師、著書『古代ギリシャのリアル』。
古代祭儀再現イベント「古代ギリシャナイト」主宰。

著書に『古代ギリシャのリアル』、『小学館の図鑑NEO 星と星座(新版)』監修協力、2020年東京オリンピック採火式NHK生中継での古代ギリシャ語同時翻訳など。


――本日はよろしくお願いします。『那由多の軌跡』に関するご質問の前に、藤村さんはよくゲームで遊ばれるのでしょうか?

藤村シシンさん(以下、敬称略):学生時代はかなり遊んでいましたね。夏休みになると徹夜して『ファイナルファンタジー』シリーズみたいな、長いロールプレイングゲームで遊ぶんです。ただ最近は生活スケジュールもあって、まとまって遊ぶ時間が取れなくなってしまいました。

私は毎日1時間ずつ遊ぶよりも、一気に12時間くらい進めてしまいたいと考えるタイプなで、なかなかプレイする機会は無くなってしまいましたね

――過去に遊ばれていたゲームタイトルも、ギリシャに関係するものを選ばれていたんですか?

藤村シシン:そうですね。当時からそんなゲームばかり遊んでいた気がします。有名どころだと『ゴッド・オブ・ウォー』から、『アルゴスの英雄』といった結構渋めの作品などですね。

――ありがとうございます。では本題へと移りますが、本作の舞台である“残され島”について。島に残っている遺跡の建築様式などから、なにか世界史のエッセンスを感じるポイントはありますか?

藤村シシン:おそらく私たちが生きる世界とは違う、本作における暦だと思うのですが、プロローグのはじめに「1579年」と表示されたので、大航海時代をイメージしているんだろうなと直感しました。

“古の歴史が積み重なった上に人々の生活圏が成り立っている”という世界観は、古代ギリシャらしさを感じますね。海に沈んだ遺跡の上に人々が暮らしていて、忘れ去られた当時の文明が垣間見える感じがいいですね。

――実在するギリシャの都市で、もっともイメージに近いところはどこでしょうか?

藤村シシン:パッと見ですが、そんなに広い島ではないですよね。挙げるならエーゲ海に浮かぶ「デロス島」が近いかなと。観光資源の多いミコノス島の近くにある小さな島なのですが、海に沈んで朽ちた遺跡が積み重なっていて、その上に人々が暮らす町が存在しています。

エーゲ海・キクラデス諸島に所在する「デロス島」

現在は、古代ギリシャの時代より海面が高くなっているので、沿岸部の遺跡の多くは沈んでしまっているんです。だから海に潜ると遺跡が見つかるというのは、ギリシャでは珍しくないことなんですよね。

――ちなみに本作の世界では、大昔に“大洪水”が起きて人間という種が滅びかけたという伝承が残っています。それでかつて栄華を極めた文明が滅びたそうなのですが、これはギリシャ史にも通じるように感じます。

藤村シシン:ギリシャも海洋都市なので、神話では同じように、神の怒りを買って沈んでしまいがちです(笑)。

――えぇ……(笑)

藤村シシン:例えば有名なのは「デウカリオンの大洪水」ですね。ゼウスという一番偉い神様が、「最近人間たち調子乗ってんなー」と海に沈めてしまうんです。ただ、デウカリオンという人間だけは、あらかじめ洪水が起こることを親族の神様から聞いていて、箱舟を作っておいて奥さんと一緒に避難できたというエピソードがあります。デウカリオンが良い人か悪い人かではなく、親戚に神様がいたので救われたんですね。

あとは哲学者・プラトンが書き遺した、アトランティス大陸が一夜にして海に沈んだ物語などもあります。ギリシャ神話における洪水というのは、調子に乗っちゃった人間を罰するべく神々が発動させるリセットボタンというイメージです。

――「人間が調子に乗っている」と神様が思う基準はどういったものなのですか?

藤村シシン:例えば古代ギリシャでは、お祭りでは神々に牛を捧げなければなりません。さらに言うと最も良い牛が供物になるのですが、人間たちが「勿体ないから自分たちで食うわ!」といった変な気を起こしてしまうと「許さん」となります。そもそもお祭りをやらないみたいなことも理由になります。

リセットボタンには雷を用いることもありますね。雷は人類全体というより、「こいつだけは許さん」といった特定の誰かをピンポイントで狙う時に用いられます。人類をリセットさせる方法にも色々あるんですね。

カギとなるのは月の存在……『那由多の軌跡』の世界では地球が丸いことに気づけない理由があった!?

――さらに本作のカギとなるのが「地球平面説」です。本作の世界ではそれが広く信じられており、天体観測が趣味であるナユタは数少ない例外で、「世界はどのような形をしているのか?」……その謎を解き明かそうと奔走することになります。

藤村シシン:確かにナユタは、もしかしたら球体なのではないかと気づきはじめていましたね。

主人公の「ナユタ・ハーシェル」

――こちらと絡めて、かなり進んでいたという古代ギリシャの天文学のお話も伺えると嬉しいです。

藤村シシン:古代ギリシャは紀元前800年から紀元後500年、つまり1200年くらいの期間があって、そのなかで平面説から球体説へと移っていく過程が見られるのは面白い要素ではあります。ただ肝心の「地球が球体である」と初めて実証した人物の記録は残っていないです。

はじめは本作と同じように平面説が広く信じられていて、紀元前6世紀頃にギリシャから程近い、フェニキアの船乗りたちがアフリカ大陸1周へチャレンジしました。そこで彼らは、太陽が南ではなく北に見えていることに気づきます。さらには南天の星が北半球とは逆向きに回っており、それは地球の表面がカーブしていないと起こりえない現象ですので、その時に球体だと気づいたというのが一説としてあります。

ただ、それで実証されたというわけではありません。その段階では大地が立方体である可能性もありますよね。、だからこそ当時の学者たちは、球体だという人もいれば立方体だという人もいて、考察が進むのは紀元前4世紀くらいのアリストテレスの登場まで待つことになりました。

――アリストテレスはどんな発見をしたのでしょう?

藤村シシン:月食時、太陽と月の間に地球が入りますよね。これにより地球の影が月面へ映し出されますが、その影を観察したところ円形だったんです。資料に残るような形で初めて実証したのはアリストテレスですね。その後、地球が球体だとわかった人間たちはその大きさについて考えるようになります。最終的には紀元前2世紀ごろにエラトステネスが、実寸とほぼ同じである“周囲4万Km”であると突き止めます。古代ギリシャの天文学の主だった流れは以上ですね。

――ということはナユタも“月食”を観察できれば……。

藤村シシン:あーいや、先ほどプロローグを見ていて非常にマズいと思ってしまったんですが。

本作世界には……月が2つありますよね?

――あ……。

藤村シシン:月がふたつもあると、我々が生きる地球とはかなり話が変わってきます。この世界ではどういう月食が起こるのか、片方の月だけが映り込むのかみたいな点も気になりますね。

藤村シシン:ストーリー冒頭に登場するナユタの部屋に六分儀があったので、天文学が進んでいる世界だと思っていたのですが、。月がふたつもあるとなると、逆にこの世界の住人たちは惑わされている可能性が高い。北極星みたいな目印になる星があるといいのですが……、この辺りが無いと仮定すると、地球が球体であることに気づくきっかけは相当現実と違うものになってきそうです。こちらの常識が通用しない世界と言いましょうか、すみません舐めてました。

――では一旦、天文はさておくとして(笑)。他にも本作の要素から、世界史的なエッセンスを感じるものはありましたか?

藤村シシン:それで言うと歯車”ですね。細かい歯車をたくさん複合させて複雑な機械を作るのは、16世紀よりもっと後の技術だと思います。

実は古代ギリシャでもアナログコンピューターみたいなものは発明されていて、ハンドルを回すと50個くらいの歯車が噛み合って計算をする「アンティキティラの歯車」という機械があって、そういった技術は一瞬だけ進んでいたんですよ。

――また本作のゲームシステムは「四季変化システム」というものも特徴的です。それと絡めてギリシャにおける四季についても伺わせてください。

藤村シシン:季節の変化は古代ギリシャにもありますね。ただ日本人のイメージする四季とは違っていて、「春夏冬」「春夏秋」といった三季や、「夏」「冬」の二季という考えもありました。

現代日本と最も違うのは6月で、古代ギリシャでは6月を「傘持ち月」と呼んだりします。これを聞くと梅雨を連想するかもしれませんが、古代ギリシャでは一番日照りが強いのが6月で、日傘を持たなければいけないんです。

夏は一番乾燥していて冬に雨季がくる。乾季と雨季というふたつの大きな季節があって、そこに細かく春夏秋冬を乗せるかという感覚ですね。

――日本人との捉え方の違いで言うと、『軌跡シリーズ』には「みっしぃ」という猫のマスコットキャラクターがいて、本作にも登場するのですが、古代ギリシャにおける“猫”というのはどのような存在ですか?

藤村シシン:山猫が描かれることはありますが、愛玩動物としての猫はいなかったようですね。たとえ鼠を狩るための動物だとしても、ギリシャではイタチの方がポピュラーです。

逆に親しみのある動物だと犬になります。「ライラプス」というどんな獲物も逃さない犬と、どんな狩人からも逃れるイタチみたいな、中国の故事である“矛盾”みたいな永遠に終わらない追いかけっこのエピソードがあるくらいで。

――ありがとうございました!さて最後に、実際に本作をプレイされてのご感想をお願いします。

藤村シシン:とても面白かったですね。アクションなので最初は難しいかなと身構えていたのですが、操作にクセがあるわけでもなかったので初心者でも大丈夫そうでした。

物語については、最初に“この世界が丸いのかどうか”の問いかけがされていて、今後はどういう風に冒険と絡んでいくのか気になりますね。またこの世界では、地球が丸いかどうかは実用的な学問ではないように見えたのですが、主人公のナユタが学者タイプなのが好感触でした。兵器を作るとかの目的ではなく、純粋な知的好奇心で動いている。ギリシャでいうところの最も学者たちが花開いた時代「ヘレニズム期」を連想しましたね。

他のシリーズを遊んでいる人は勿論、またシリーズを知らない人でも楽しめる内容になっていると思いますし、私みたいな古代ギリシャ勢でも楽しめました。知的好奇心が強い方に向いている作品だと思いますよ!


なお取材後に「これまで古代ギリシャ関連で呼ばれることは多くても、地球球体説で呼ばれたのは初めてだった」と話した藤村シシンさん。インタビューもですが、ゲームプレイも終始笑顔で、たくさんの不思議に満ちた本作世界観を楽しまれていました。

日本ファルコムの人気ストーリーRPG「軌跡」シリーズ。唯一のアクションRPGのスイッチ移植版『那由多の軌跡 アド・アストラ』は5月26日に発売予定。ある意味で藤村シシンさんもお手上げの“月がふたつある世界”で、主人公・那由多はどんな冒険を繰り広げるのか、ぜひその目で確かめてください。

『那由多の軌跡 アド・アストラ』公式サイトはコチラ
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