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“読書感想文苦手派”のゲーマーよ、夏休みの課題を乗り切るならこの本だ! ゲームと親和性の高い名シリーズと意欲作

ゲーマーの中には、読書感想文が苦手な方もいることでしょう。そこで、ゲーマーにこそお勧めしたい名シリーズと近年の意欲作を、それぞれおひとつずつご紹介。課題がある方は、この本で乗り切りましょう!

ゲーム 特集
“読書感想文苦手派”のゲーマーよ、夏休みの課題を乗り切るならこの本だ! ゲームと親和性の高い名シリーズと意欲作
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8月も残り少なくなり、学生たちの夏休みも終わりが近づいてきました。同時に迫りくるのは、宿題や課題の締め切り。それぞれ得手不得手があるかと思いますが、その中でも特に分かれやすいのが、読書感想文でしょう。

読書感想文を取りやめた学校も増えましたが、継続して行っているところもあり、この課題はもうしばらく学生に付きまといそうです。得意なら負担にはなりませんが、小説などの長い文章を読むのが苦手という人には頭痛の種です。

ゲーマーの中にも、読書感想文が苦手という人も少なくないはず。「アドベンチャーゲームは好きだけど、小説を読むのは苦労する」という人もいますし、あくまで向き不向きなのでなんらおかしくありません。

出来ればやりたくない。でも、やるしかない。そんな窮地に立たされているあなたがもしゲーマーなら、“読書感想文苦手派”なゲーマーにこそお勧めしたい本があります。どんな本なのか、そしていかなる理由でお勧めなのか。どうぞご覧あれ。

■ゲーム雑誌から生まれた珠玉のショートショート「ゲーム・キッズ」シリーズ

“読書感想文苦手派”なゲーマーの方々にお勧めしたいひとつめの作品は、渡辺浩弐氏が手がける「ゲーム・キッズ」シリーズです。「本を読むのが苦手なのに、いきなりシリーズものなんて無理過ぎる!」と思った人もいるかもしれませんが、シリーズだからといって身構える必要はまったくありません。

「1999年のゲーム・キッズ」から始まった本シリーズは、いずれもショートショート形式の短編ばかりを集めた書籍で、一冊の中に30編以上の物語が詰め込まれています。しかも各短編はそれぞれ独立しているので、続けて読む必要はなし。極端な話、気になった短編をいくつか読んで、それらに関する読書感想文を書くという手もあります。

例外もありますが、1編が5ページほどで終わるので(文庫本の場合)、長い文章を読むのが苦手な方でもかなり読みやすい小説だと思います。また作品全体も、ゲーマーならば親和性の高い話が少なくないので、興味が持てる可能性が十分あります。

例えば、「1999年のゲーム・キッズ」の記念すべき第1話「家族の絆」は、勉強を促す親に反抗する子どもが、作中世界にある「DNAシミュレーション」というゲームに当てはめて反論する姿を描いています。

その子どもは、優秀な人間に育つには両親も優秀でないとダメだ、と持論を展開。「DNAシミュレーション」は実際の人間のDNA解析も可能で、自分の両親のデータを入れたところ、その子ども……つまり自分の能力はごく平凡なもので、努力しても無駄だと説明します。

そして、優秀な子どもにならないのは、相性のいいタイプと結婚しなかったからだと語り、親の責任だと突きつけます。そして、「しょうがないよ。ゲームだったら、最初からやり直せるけどさ」と締めくくりました。

しかし──やり直せるのはゲームだけの特権ではありません。そんなことを言い出すような子どもなら、いっそリセットして作り直した方が……残酷な現実を突きつけた子どもに、残酷な現実が襲い掛かる逆転劇。濃密すぎる5ページで、第1話を鮮やかに飾りました。

このように、ゲームを題材とした話も「ゲーム・キッズ」には多数登場します。ただし作中の時代は、ちょっとだけ先の近未来。発展したデジタルが、社会や人間にどんな影響を与えるのか。変わりゆくかもしれない、数年後の“可能性の断片”ばかりを集めたのが、「ゲーム・キッズ」シリーズなのです。

しかもこのシリーズは、「ファミコン通信」(現「ファミ通」)の連載から始まったもの。元々、ゲーム少年&少女に向けた小説だったので、ゲーマーが馴染みやすい題材なのもむしろ当然。親しみやすさは、数多ある小説の中でも群を抜いています。

■デジタルな未来を紡ぐ先見性と、そこに潜む仄暗い恐ろしさ

また、「ゲーム・キッズ」の興味深いのは、その面白さに加えて、往々にして身に迫る怖さが潜んでいること。脳死を扱った「遺産」などは、その顕著な例と言えます。

「遺産」の主人公は、ひとりで子どもを育てる母親。少し前までは、自分の父親──子どもから見て祖父──が働いてふたりを支えていましたが、2年前に脳溢血で倒れてしまい、以後はふたり暮らし。

そんな母親も身体を壊してしまい、寝たきり状態となりますが、「いまだに毎日休まず、働き続けてくれる祖父」のおかげで、なんとか生活できていると語ります。

脳溢血で倒れたはずの父親が、なぜ働いているのか。その謎はほどなく明かされました。2年前に倒れた祖父は脳死状態になっていましますが、ある会社の人間が母親に提案をします。「脳死でも、生きる権利があり、また働く権利もある」と。

その後祖父は“工場”へと運ばれ、命を長らえることになります。血液を生み出し続ける、という仕事をしながら。また血液だけでなく、必要となれば骨髄液や臓器も提供するとのこと。そこで祖父が“働く”ことで、ふたりの生活を支えていたのです。

しかし、この生活の終わりが近いことを、母親は悟っています。自分の身体が弱り始めたのは、その会社が提供する食べ物を口にし始めてから。そこにどんな意味があるのか気づいていましたが、「それでもいい」と母親は考えていました。近い将来、自分も祖父のように“働く”ことを示唆しながら。

脳死の線引きは、倫理や感情、医療費の大きさも関係し、未だに意見が分かれるところです。「それでも生きている」と考え、その上で社会に関わる形があるとしたら……そんな未来を、悲しくも厳しく、しかし一抹のリアリティを込めて描いた「遺産」。こうした、近未来の日常に潜む怖さ、そして時に哀愁を交える優れた描写が、「ゲーム・キッズ」の特徴的な持ち味と言えます。

また「ゲーム・キッズ」に唸らされる点のひとつは、その先見性です。「遺産」で描かれた要素のいくつかは、すでに皆さんが何らかの作品で目にしているかもしれません。ですが、「遺産」を収録した「1999年のゲーム・キッズ」の発売年は1994年と、今から30年近くも前。「ファミコン通信」での掲載タイミングを考えれば、その初出はさらに遡ります。

今日明日には訪れず、しかし数年後は自分にも忍び寄るかもしれないデジタルな未来を、平成初期の時点でいち早く見越して雄弁に語り続けてきた「ゲーム・キッズ」。その上で、短編単体だけを読んでも成立する手軽さも持ち合わせているので、長文が苦手な人にも強くお勧めできます。

「ゲーム・キッズ」シリーズは電子書籍版があるので、購入しやすい点もポイント高し。買う前に自分の好みに合うか知りたいという人は、インターネット上で誰でも読める「2013年のゲーム・キッズ」の第1回「謎と旅する女」を読んでみましょう。この話が刺さったら、「ゲーム・キッズ」全般を楽しく読めると思います。

ただし、「謎と旅する女」の内容はかなり強烈なので、ホラー要素が苦手な方はやめておく方がいいかもしれません……!



《臥待 弦》
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