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“小さくなった”私から『SAEKO: Giantess Dating Sim』をまだ知らない貴方へ贈る、命がけの「非平等」デートシムの圧迫的魅力【TGS2024】

『SAEKO: Giantess Dating Sim』をまだ知らないあなたは、「この作品の魅力を知ることができる」という楽しみが待っています。

ゲーム 特集
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■尊厳と引き換えに死ぬのか、それとも媚びて死ぬのか……どれも死の予感しかない「デートシム」

残酷な現実を叩きつけられる「昼パート」が終わると、冴子の机の上に招かれる「夜パート」が始まります。初日の「昼パート」はチュートリアル(操作と、厳しい現実の)要素がメインだったため、ゲームとしての展開はここから本格的に始まります。

試遊版で体験した範囲では、「夜パート」で可能な行動は、冴子の会話に反応するのみ。適度なタイミングで相槌を打ったり、質問に対して返答を選ぶのが、プレイヤーに許されたアクションです。

力関係は明白なので、冴子の機嫌を損なうような反応はできません。この「できません」はシステム的にという話ではなく、プレイヤーの心情的に、という意味です。

たかがゲームと言われそうですが、自分の手でモコを捧げてしまった自責の念と、何の躊躇もなくモコを「おいしく」いただいた冴子を見たら、心が折れないわけがない!(弱者の叫び)

最初に触れた構図も、こちらの気持ちを萎縮させる効果を増幅させているのでしょう。会話中はその傾向がより顕著になり、画面から顔が見切れて、首から下の上半身と両手しか見えない状態も長く続きます。

冴子の表情が分からないので、こちらの返答が合っているのか、それとも気分を損ねているのか、明確な判別ができません。そのため、ペンを動かす手が不意に止まったり、机を叩く左指の動きにいちいち反応していまい、「今の返答は失敗したのか……?」と闇雲な不安に襲われることもしばしば。

しかも冴子は、ただのイエスマンな反応は望んでいません。相槌ばかり繰り返せば適当な反応だと思われてしまい、会話の選択を間違えれば「見当違い」と判断されます。

返事をする以外にも「無言でいる」といった反応もできるので、機械のように相槌するのではなく緩急をつけ、冴子の本意には逆らわず、しかしイエスマンにもならない。そんな、綱渡りのような精緻で完璧な振る舞いが、冴子との交流を続ける上で必須となります。

小人を食べる理由を聞くと、「おいしいから」と答える冴子。食べられる側からすれば、怒りも憎しみも生まれますが、感情をそのまま叩きつければ、おいしくいただかれる以前に握りつぶされてしまいます。

死にたくないから、機嫌を損ねないよう、「おいしいから」に「いい」と答えるべきか。死にたくないからこそ、「よくない」と主張すべきか。死にたくないはずなのに、どちらを選んでも死に近づきそうなADV。この葛藤と緊張感にこそ、『SAEKO: Giantess Dating Sim』の醍醐味があるのかもしれません。


本作の試遊台には、「命がけの非対称デートシム」と書かれていますが、まさにその通りといった内容でした。その上で、個人的な感想を敢えて付け加えるならば、平等感が皆無な“非平等”デートシムだったようにも思います。

こちらの生死をたやすく左右する圧倒的な存在を前に、ひとつ答えるたびに死がチラつき、次の会話が来れば「生き残った」と生の喜びに打ち震える。そんな、圧迫と安堵が入り混じる奇妙な魅力に引き込まれ、時間を空忘れるほど『SAEKO: Giantess Dating Sim』に没頭してしまいました。

その表現や切り口、プレイ感なども含め、決して万人向けとは言えそうにありません。しかし、この作品でしか味わえない旨味があるのも、疑いようのない事実です。「そんな理不尽なゲーム、なんで遊ぶの?」と聞かれても、「面白いから」としか答えられない自分がいます。その意味では、冴子に若干の親近感も覚え……いや、食べるのは違うよやっぱり!

そんな思いが拭いきれなかったのか、今回のプレイの結末は、冴子の左手の中で“小さく”なりました。皆様は、同じ轍を踏まれませんように……。ちなみにPCをお持ちの人は、Steamで体験版が配信されているので、ぜひ直接遊んでみてください。

《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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