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トレンドを席巻した「バーチャルボーイ」ってなに? 時代の先を行き過ぎて、“任天堂の黒歴史”とも揶揄された悲しきハード

令和7年に「バーチャルボーイ」がトレンドを席捲する未来を予測した人は、ほとんどいなかったはず。なぜ今、「バーチャルボーイ」が話題となったのでしょうか。

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トレンドを席巻した「バーチャルボーイ」ってなに? 時代の先を行き過ぎて、“任天堂の黒歴史”とも揶揄された悲しきハード
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■時代の先を行き過ぎた「バーチャルボーイ」の苦戦

性能面まで含めた復刻ではないものの、配信されるソフトを遊ぶ環境を再現するため、「バーチャルボーイ for Nintendo Switch 2/Nintendo Switch」を商品化した任天堂の徹底ぶりには、感服するばかりです。

そして、驚きをもうひとつ後押ししたのは、「バーチャルボーイ」の存在そのものにもあります。「バーチャルボーイ」の最大の特徴は、右目と左目の視差を利用した立体表現を可能にした点にあり、奥行きから迫りくるボールや、立体感のあるキャラクター描写などに秀でていました。

「バーチャルボーイ」が発売された1995年当時は、「セガサターン」や「PlayStation」といったゲーム機が発売されたばかり。ポリゴンによる3D表現が加速し始めた頃に、任天堂は体験としての立体視に踏み出していました。

初代「PlayStation」

ただし、その挑戦は良好な道のりではありませんでした。他社のゲーム機、特に「PlayStation」は多くのゲームファンから好意的に受け止められ、順調に販売台数を伸ばしていました。

『リッジレーサー』に『ジャンピングフラッシュ! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻』、『エースコンバット』、『アクアノートの休日』』、『アークザラッド』など、見た目も刺激的でゲームとしても魅力的なラインナップが続々と登場し、確かな支持を集めていきます。

こうした名作がリリースされた後に登場した「バーチャルボーイ」は、立体視という独自の強みはあったものの、その魅力が分かるのは体験したプレイヤーのみ。また、グラフィックも赤と黒のモノトーンに限られており、ゲーム画像だけを見ると地味な印象が拭えません。

一般的な家庭用ゲーム機とはコンセプトも目指した体験も異なるのですが、「ゲーム機」というくくりで比較された場合、性能的にもゲームソフトのラインナップ的にも苦しい立場にありました。

「PlayStation」に「セガサターン」、そして任天堂自身も1996年に「NINTENDO64」を投入し、“次世代機争い”が活発だった時代。その渦中に、体験を重視した特化型の「バーチャルボーイ」が広く成果を上げるのは難しく、発売当初から伸び悩み、最終的には定価を大きく下回る“投げ売り”に近い状態で販売する店舗もあったほどです。

注目こそ集めたものの普及には届かず、販売台数の少なさから“任天堂の黒歴史”と揶揄する人もいた「バーチャルボーイ」。性能などの厳しい条件の中でも立体視体験を実現した挑戦的なゲーム機は、しかし市場の期待に応えることなく静かに幕を閉じました。

■それでも愛され続けている「バーチャルボーイ」

ただし、「バーチャルボーイ」の試みそのものが失敗だとは言えません。任天堂が立体視を試みた歩みは古く、ファミコン時代にも「ファミコン3Dシステム」で迫力ある体験に挑戦しています。

「バーチャルボーイ」の歴史も含めた立体視への挑戦は、2011年に発売された「ニンテンドー3DS」に繋がっており、特別な機器を必要としない裸眼による3D立体視機能を実現。この体験に驚き、忘れられない思い出になったユーザーも多いことでしょう。

また、「Nintendo Direct 2025.9.12」で発表された「バーチャルボーイ for Nintendo Switch 2/Nintendo Switch」が大きく話題になったのは、ゲームファンの中で「バーチャルボーイ」の存在感がしっかりと根付いていたため。購入する人は少なかったものの、ある種のカリスマ性を持っており、今回の盛り上がりはその証左とも言えるでしょう。

少なくないゲームファンの記憶に刻まれ、今回改めて注目を集めた「バーチャルボーイ」。時代を先取りし過ぎた立体体験が、この令和に楽しめるようになります。

懐かしく新しかった「バーチャルボーイ」の魅力を、これからはスイッチ2やスイッチの画面越しに堪能しましょう。「バーチャルボーイ Nintendo Classics」の幕開けは、2026年2月17日です。


《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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