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『スーパーマリオ64』30年来の謎に挑んだ研究者が語る、32×32ピクセルの石碑と「Eternal Star」説。話を訊いた【インタビュー】

約123万通りの候補を検証。AIが碑文を読んだのではなく、90年代の制作工程を再現したという研究の全貌。

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画像提供:mochi64
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『スーパーマリオ64』のピーチ城の中庭にある石碑。長年「L is Real 2401」と読めるのではないかと噂され、ルイージの隠し要素をめぐる都市伝説の象徴となっていました。

今回、ゲームのデータに残る32×32ピクセルの画像から文字の制作工程を再現し、「Eternal Star / We hope so」が有力であるとする研究が公開されました。Game*Sparkでは、研究に取り組んだmochi64氏にメールインタビューを実施。解析の方法、AIの役割、残された不確実性について詳しく聞きました。

なお、これは研究者による推定であり、任天堂や当時の開発者が碑文の内容を確定したものではありません。

約123万候補から「Eternal」が首位に。石碑の文言をどう推定したのか

――この石碑を研究しようと思ったきっかけは何ですか? 発売から約30年経った今、挑戦した理由も教えてください。

mochi64氏:この碑文はゲーム史でも最も古い未解決の謎の一つです。誰もが見たことはあるのに、誰も読めない。石碑全体がわずか32×32ピクセルの画像で、文字の高さは3~5ピクセルしかありません。そこで私は「読む」のではなく「作り直す」ことを考えました。正しい文字を入力して、当時の制作者と同じように縮小し、同じ石の背景と重ねれば、同じピクセルになるはずです。違う言葉なら違う結果になります。今なら家庭用のGPUでも数時間で数百万の候補を検証でき、AIのコーディング支援があれば、かつて小さなチームが必要だったソフトを一人で作れる。それが今取り組んだ理由です。

――「Eternal Star」が有力候補として浮かんだとき、予想していたのでしょうか?

mochi64氏:予想通りでもあり、意外でもありました。「Eternal Star」は新説ではなく、Super Mario Wikiでも以前から有力な読み方として挙げられていました。ただ、誰も証明していませんでしたし、2行目は不明でした。だから先入観を持たず、むしろこの説を崩すための検証に多くの時間を費やしたんです。コンピューターには「Eternal」と教えず、文字の組み合わせから「Lternal」のような意味のない語も含む123万7,405通りの候補を作らせました。

その結果「Eternal」が1位になり、次の実在する英単語「Sternal」は1万3,217位でした。もっと驚いたのは2行目で、一般的な英単語1万7,700語のブラインド探索から「We hope so」が出てきて、上位8件すべてに「hope」が含まれていました。

――「Eternal Star / We hope so」はどの程度確実なのでしょうか? 上段と下段では証拠の強さも違いますか?

mochi64氏:「Eternal」と「hope」には非常に強い確信がありますが、ほかの語には差があります。「Star」は2万7,122語の候補で1位なので自信があります。「We」も文字の形が合う実在の英単語として最有力です。一方、最後の「so」は最も弱く、「or」「us」「he」も近い結果になります。解析では画像の不一致度を点数にしており、低いほどよく一致します。

「Eternal Star」は789点、「L is real 2401」は2,031点で約2.6倍の不一致です。2019年の「A Secret star / lie here ~」説と全文で比較すると、そちらが4,304点に対して「Eternal Star / We hope so」は1,129点でした。復元画像は、文字の部分で平均すると32段階の灰色のうち約1段階しか違いません。

――その言葉が本当に書かれているとして、なぜ選ばれたのでしょう?

mochi64氏:ここからはピクセルによる解析とは別の、私の解釈です。石碑は星を抱いた像についていて、パワースターはゲームの中心的な存在です。「Eternal Star」は像の名前のようにも見えます。また、日本の記念碑には名前と願いを刻むことがあります。「永遠の星」と「そうであってほしい」という組み合わせは、日本的な英語表現にも感じられます。

1998年、Nintendo of Americaがファンに対し、碑文は開発者の意味のないジョークだと説明した手紙もあります。ちょっとした願いの言葉という解釈なら、それとも合います。初期構想とのつながりは見つかっていません。背景には1990年代の日本の写真素材CD「素材辞典」に収録された金属の写真が使われており、手早く作られた小さな装飾だったように見えます。

「L is Real」の都市伝説を否定したかったわけではない

――「L is Real 2401」という伝説そのものをどう思いますか?

mochi64氏:私はこの伝説が大好きです。数ピクセルの文字を手がかりに、子供たちが何年もルイージを探し続けた。それもゲーム史の一部です。伝説を否定するために始めたわけではありません。石碑に本当は何と書かれているか知りたかったんです。

「L is Real」説もほかと同じ条件で最も一致する設定を探しましたが、結果は約2.6倍悪かった。短い「L」や単語の間の空白、横幅のある4桁の数字を想定する必要があるのに、画像には隙間のない長い最初の単語が見えます。

2020年に流出したファイルから初期開発にルイージがいたことはわかりますが、その資料は碑文について何も語っていません。私は流出資料を解析に使っていません。

任天堂や開発者から新たな声明は出ていませんし、私は連絡を取っていません。公式に知られている説明は1998年の手紙です。確定させるには、縮小前の元の画像ファイル、または実際に文字を描いたアーティストの証言が必要でしょう。私の説が間違いだと示すものでも歓迎します。

AIが碑文を読んだわけではない。90年代の画像制作を逆算する

――研究でAIは何を担当し、結果をどう検証したのでしょうか?

mochi64氏:AIは道具を作る手助けをしましたが、碑文を読んだのではありません。AnthropicのClaudeをコードの作成・修正、GPUでの大量探索やレポート作成の補助に使いました。研究の方向性を決め、結果を確かめ、判断したのは私です。解析プログラム自体には画像認識AIもアップスケーラーもありません。文字を入力して縮小し、ピクセルの差を数えるだけなので、同じ入力なら同じ結果になります。

さらに、コンピューターが選んだ50の秘密の英単語を本物の石碑に埋め込み、答えを知らせず探索させたところ50語すべてを発見しました。隠し文字がない偽の石碑にも各手順を適用し、本物に対してのみ有効な改善を採用しています。コードとデータは公開しているので、誰でも再現や挑戦ができます。

――誤った結論に向かいかけたことや、AI支援ならではの難しさはありましたか?

mochi64氏:何度もありました。AIは速くコードを書きますが、小さな誤りを犯しても自信ありげに見えることがあります。ある検証では丸め誤差によって文字の位置が少しずれ、スコアが変わってしまい、別の厳密なプログラムと照合して発見しました。また、背景写真のどの部分を使ったか探すと「最良の位置」が出ましたが、ランダムな位置でもほぼ同じスコアだったので結論にはしませんでした。

「Lternal」のような無意味な綴りが「Eternal」に近い値を出すこともあります。ピクセルが決めるのは文字の形であり、意味のある英単語を選ぶには言語の知識も必要です。城内の別の小さな額縁も調べましたが、文字の高さが2ピクセルしかなく、意味の通らない結果ばかりだったので「読めない」と報告しました。

――日本語やローマ字、日本の当時のフォントの可能性も検証しましたか?

mochi64氏:はい。「永遠の星」「えいえんのほし」「エターナルスター」「ひみつのスター」などを明朝体・ゴシック体で試しましたが、いずれも「Eternal Star」より不一致が4~7倍大きかった。日本語は四角い字形が並ぶのに対し、石碑には大文字や「t」「l」が高く、小文字がその間に並ぶラテン文字のイタリックらしい形が見えます。

ローマ字は123万候補のアルファベット探索にも含まれますが、近いものはありませんでした。ただしローマ字専用の辞書は別途試していません。1993~96年ごろのフォント約470種類には日本のMacintoshやWindows、任天堂が利用していたSilicon Graphics製ワークステーションの環境も含めました。

最も一致したのは、1995年のSGIにも導入できたAdobeのPalatino Bold Italicです。碑文の画像は日本版・米国版・欧州版・振動パック対応版で同じなので、日本で最初から英語として作られたと考えています。

――コミュニティからの反応や反論はどうでしたか?

mochi64氏:おおむね好奇心を持って前向きに受け止められ、VGCなどのゲームメディアでも紹介されました。反論も検証に役立ちました。「N64では画面表示時にぼける」という指摘には、私は画面写真ではなくゲームファイルに保存された画像そのものを使っていると説明しました。「灰色の階調が少ない」という点も、ゲーム形式と同じ丸め処理で再計算しましたが順位は変わりません。

「Eternalを狙い撃ちしたのでは」「AIがでっち上げたのでは」という疑問には、50語のブラインドテストと公開コードが答えです。今のところ、私より良いスコアの読み方は投稿されていません。挑戦は引き続き受け付けています。

――90年代のテクスチャ制作工程を再現した具体的な手順を教えてください。

mochi64氏:まずPalatino Bold Italicで文字を入力します。1行目の文字の高さは約26ピクセル、2行目は約19ピクセルで、約190×160ピクセルの小さな作業領域に置きます。いくつかの文字を最終画像の3分の1ピクセル未満に相当する程度ずらして間隔を調整し、一般的なバイリニア補間で32×32ピクセルに縮小。軽いぼかしとガンマ1.4の明るさ調整を加えます。

その文字を約30度回転させた金属素材の上に明るい刻印のように重ね、32段階の灰色を使うゲーム用形式で保存します。最後に、文字からは再現できない7ピクセルがあり、作者が手で修正したように見えます。フォントは90年代の約470書体と現代の4,583書体を同じ方法で比較しました。

もし原作者から違うと告げられても——解析は続く

――この方法はほかのゲームの謎にも使えますか?

mochi64氏:小さな画像がどう作られたかを再現できるなら、古いゲームの別の文字にも応用できます。『スーパーマリオ64』の木の看板では「I'm here. See / me as you go. / Hold on!」という読み方が最有力です。ただし「I'm here. See」には比較的自信があるものの、後半は確度が落ちます。城内の小さな額縁の文章も、一部は「Ha…」で始まるようですが、残りは小さすぎて読めません。『Noita』の目の記号や、1999年の『バイオハザード3』の不思議なポスターも次の調査対象です。

――もし当時の開発者から、実際にはまったく違う文字だったと告げられたらどう思いますか?

mochi64氏:むしろ興奮すると思います。ようやく答えがわかるのですから。それが最初から目標でした。すぐに訂正を公開し、なぜ「Eternal Star」がこれほど一致したのかを考えたい。あとから絵を修正したのか、別のバージョンの文字を使ったのかもしれません。手法、検証、データは公開しているので、間違いが判明すれば、手法の限界も明確になります。

――この碑文は『スーパーマリオ64』の物語や歴史の中で、どんな意味を持つと思いますか?

mochi64氏:数ピクセルの灰色の点から「ルイージが隠されている」という有名な噂が生まれ、長い間プレイヤーが城を探し回りました。仮に「Eternal Star. We hope so.」だったとしても、その歴史は消えません。むしろ日本の小さな開発チームが星を抱く像に刻んだ、静かで人間らしい願いが加わります。約30年が経っても人々はゲームを遊び、語り、この石碑をよく見ています。ある意味で、その願いは叶ったのかもしれません。

――最後に、ほかに取り組んでいるゲーム研究を教えてください。

mochi64氏:『スーパーマリオ64』では看板や城内の額縁など、ほかの隠れた文字を調べています。また、ゲームのメモリを使って、2013年に話題になったチックタックロックの「upwarp」など有名なグリッチやスピードラン技を検証しています。『Noita』の「目のメッセージ」、1999年版『バイオハザード3』の謎のポスターにも取り組み中です。これらの研究はレトロゲームのチャンネル「mochi64」で公開しています。

――ありがとうございました。

《みお》

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