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【ゲームニュース一週間】仮想世界と相互理解

Muxlim社はイスラム教徒向けの仮想世界『Muxlim Pal』を2009年に本格オープンすると発表しました。

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Muxlim社はイスラム教徒向けの仮想世界『Muxlim Pal』を2009年に本格オープンすると発表しました。

『Muxlim Pal』は『Second Life』のようなフル3Dタイプではなく『Habbo』のような2Dタイプ。女性のアバターがフードを被っており服装の露出度も少なめ。公式サイトでは礼拝用絨毯の上でイスラム式の祈りを捧げているシーンがフィーチャーされるなど、イスラム圏向けであることが強調されています。他の仮想世界はイスラムコミュニティに向けた内容を提供していないとするのがMohamed El-Fatatry氏の考え方で、非イスラム教徒との相互理解も目指していくとしています。

仮想世界サービスは人種や地理的条件を越えて交流できるのがウリですが、イスラム圏から「今ある仮想世界は自分たち向けのものではない」とする意見が出たことには大きな意義があるのではないでしょうか。

宗教が日常生活にどれだけの影響を及ぼしているか、これは国や宗教によって大きく違います。例えばゲームの女性キャラクターといえば露出度が高いことが“常識”ですが、MMORPG『RAPPELZ』のイスラム圏バージョンでは女性キャラクターの肌を布で覆う処置が施されていますし、『Muxlim Pal』では女性アバターにフードと長袖長ズボンの服装が用意されています。宗教の影響が少ない側が、影響の大きい側へ“寛容”を求めることは難しいことです。宗教を強く信じる人々に戒律を曲げろと言うのに近いものがあるのではないでしょうか。

たとえデジタルの世界であっても、特定の宗教を信じる人々が不快に思うような表現はされるべきではないでしょう。『リトルビッグプラネット』でもコーランに絡んだ歌詞があるとして発売日が遅れましたが、これもある意味仕方のないことでしょう。

ただ、気遣いも度が過ぎると腫れ物に触るような扱いに転じてしまいます。相手の信条を顧みない無神経な振る舞いも無礼ですが、気を遣いすぎるのも良くないでしょう。会話している時、一言ごとに「怒っていないだろうか」と探るような目で見てくる友達。これは相互理解とはほど遠いものがあります。しかし、適切な気遣いなのかそうでないのかは当事者にしか分かりません(そうした意味で『RAPPELZ』を現地の運営会社がローカライズするのは理にかなったことです)。

真の相互理解のためには、宗教の影響が大きい側が、影響の少ない側に情報を発信することも必要なのではないでしょうか。そこで役に立つのが仮想世界です。地理的な制約を越えられること、リアルタイムで対話できることは相互理解への大きなメリットとなります。『Muxlim Pal』にはイスラム圏の人々が集まるということが分かっているのであれば、生の声を聞いたりリサーチしたりすることも容易になるのではないでしょうか。互いに歩み寄ることが理解への道であり、現代社会ではどんな主張も紳士的になされるべきです。様々な仮想世界がオープンしていますが、単なる企業主導のコミュニティではなく、文化と人の交差点になれるのであれば、その意義は大きいといえるでしょう。
《水口真》
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