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任天堂・宮本茂氏インタビュー

Nintendo-Revolution: Definitive speculationにて、任天堂情報開発部長の宮本茂氏のインタビューが公開されています。その全訳です。フランス政府から芸術文芸勲章を授与されたことについて、マリオというキャラクターについて、そしてレボリューションについて等々、内容は非常に多岐にわたっています。

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Nintendo-Revolution: Definitive speculationにて、任天堂情報開発部長の宮本茂氏のインタビューが公開されています。その全訳です。フランス政府から芸術文芸勲章を授与されたことについて、マリオというキャラクターについて、そしてレボリューションについて等々、内容は非常に多岐にわたっています。

(thanks to urehaさん)


―――フランスで勲章を授与されたのは宮本さんにとってどういう意味を持つことですか? フランスがゲームを文化として認める開かれた考えを持っていると思いますか?

私がそういう大切な賞を受ける可能性があると最初に聞いたとき、正直に言えばある種の戸惑いがありました。私は長い間ゲームを作ってきましたが、それは常に多くの友人達と共にでした。しかしフランス政府がビデオゲームを文化として認めることは産業全体にとって良いことだと思い、受けることにしました。

―――そういう文化的な賞を受賞され、最近では多くの人々にゲームが受け入れられて、ビデオゲームは単に大衆娯楽という事を越えて、文化的に本と比べられるような文化になっていくのでしょうか?

私はゲームが既にある芸術や文化に対抗するようなものになるのは難しいと思います。ゲームとは何か新しい物だと思うからです。例えば、芸術と呼ばれているものは、誰か偉大な芸術家だったり作家が作るもので、私達がするのは、本を読んだり、音楽を聴いたり、絵を鑑賞したりすることです。しかしゲームというのは、先例のない形で提供されるインタラクティブな娯楽であると思います。

私がチャレンジしているのはいかにプレイヤーをクリエイティブ(創造的)にさせるかということです。もっと具体的に言えば、私達はプレイヤーに、次にどう動くか、どうすべきかということを考えて欲しいのです。こういう点がビデオゲームがビデオゲームたる点だと考えます。ですからビデオゲームは非常に異なるもので、参加を必要とする、既存の文化とは比べられない存在だと思います。

ゲームを遊ぶのは時間の無駄だと言う人もいます。しかし、プレイヤーはゲームをすることでクリエイティブになりある種の芸術家になっているのです。もしそのような側面でゲームを語るのであれば、既に文化という域に達していると思います。

―――マリオやゼルダ、そしてドンキーコングなどで、宮本さんは最も知られたフランチャイズを作ってきました。しかしそれは20年も昔の話です。宮本さんの最近のキャラクター、たとえば風変わりなゲームだった『ピクミン』のフラワーピープル(=ピクミン)などは、同じようなインパクトを持つことに失敗しています。そのかわいらしいという魅力はもう通用しないのでしょうか?

例えば、マリオがこんなにも長い間人気を維持している理由を考えると、それはマリオがプレイヤーにとってとても面白いゲームで活躍したからだと思います。

もし私達がマリオというキャラを単独で作って宣伝しても、マリオは人気あるキャラにはならなかったでしょう。マリオは20年間で世界中で人気のキャラになりました。それは人々がマリオに新しいビデオゲームを結びつけて考えたからです。それは私達が新しいハードやそれを生かしたゲームを作ったとき、マリオをキャラに採用してきたからです。

私は人々がマリオというキャラを新しいデジタルエンターテイメントを示すものとして考えていると思いますし、私達は意図的にそうなるようにしてきました。ですから、もしマリオに対抗するようなキャラが居ないのかと尋ねられたら、答え難い質問です。私はマリオというキャラ自体はそんなに人気だとは思ってませんし、そういうゲームに出たこともありません(キャラとしての魅力を前面に出したゲームのことでしょうか?)。大事なのは私がマリオというキャラをとても大事にしようとしていて、それで彼は役を与えられたらいつも最高の演技をしてくれているということです。

―――最新のマリオゲーム『Newスーパーマリオブラザーズ』は基本的には2Dスクロールゲームです。どうして良き時代の2Dアクションに戻ったのですか?

私はこれはDSというハードに捧げるものだと思います。『Nintendogs』や『脳を鍛える大人のDSトレーニング』やその他さまざまなユニークなゲームによって――私達が「Touch!Generations」と呼んでいるものですが――今までにゲームを買ったことのないような人々もDSを購入してくれました。彼らにとってニンテンドーDSは人生で初めての体験になるのです。

―――サイズについては、レボリューションは初代XBOXのコントローラよりほんの少し大きいぐらいのものです。 どれだけポータブルな感じになるのでしょう?レボリューションはゲーマーをどこに連れて行くのでしょう?

レボリューションは携帯ゲーム機だ、とすることはできないと私は思います。何とみなせばいいのか、私にはわかりません。ちょっと例を挙げましょう。日本では、電機メーカーが冷蔵庫の製品を宣伝しようとするとき、その冷蔵庫にどれだけ収納できるのか、冷却能力がどれだけパワフルか、ということについては少ししか話しません。いかに平均時の電力消費が少ないかを話すのです。自動車業界における別の例を挙げますと、ホンダの一例では、彼らは効率をアップさせたエンジンを開発しています。もっとも利益を上げているものは、結局はレーシングマシーンでもエンジンでもなく、フィットという小型車なのです。

同じことがコンソールゲーム機にもいえると思います。もちろん、現在の技術という点から見れば、任天堂はレボリューションをいささか別なマシンに作り上げたかもしれません。つまり、私達はレボリューションを、処理能力を強化することで最先端技術を駆使したものにしたかもしれません。しかし私達はその道に進むことを選びませんでした。任天堂は、今現在、家族それぞれがビデオゲームについてどのように考えているのか、ということを考えてきました。私達は、家族のそれぞれが触りたくなるような、テレビの隣に気軽に置いておけるような、そんなものにレボリューションがなって欲しいと望みました。そしてこのためには、コンパクトが騒音が少ないものになることがレボリューションに必要であり、また人を威圧させるようなものでなく人々が触れたくなるような見た目にすることもレボリューションには必要だ、と考えました。

―――あなた自身が、レボリューションにはまだ最後の秘密があるといいましたよね。世間には、3Dバイザーやプロジェクターになるのではないかという噂すらあります。では、どれだけ大きなシークレットなのでしょうか? このような高い期待があることをかんがみた上で、レリューションは本当に目的を果たすことができるのでしょうか?

ごめんなさい、それについてはまだ話せません。話せることは、レボリューションは操作するのが難しいといったようなマシンにはならないということです。我々が秘密について話すときはいつも、その秘密は人々に「触ってみたい」「遊んでみたい」と思ってもらうために作られたものです。そこに過去のゲーム経験は関係ありません。その秘密はずっと人々みんなのためにそこにあります、「ほんとにこのマシンで遊んでみたい」と感じてもらうために。

―――最近行われたドイツの観光展示会では、観光業界は、年金を受給している人に「シルバートラベラー」という名称をつけ、そういった人々の欲求を満たすことに力を入れています。あなた方は、『脳トレーニング』というゲームでシルバーゲーマーをターゲットにしています。これは今回一回限りのことなのですか? それとも年配の方々の家にレボリューションを置いてもらえるような道を切り開きたいと望んでいるのでしょうか?

日本において私達はすでにその現象を目にしています。たくさんの年配の方がすでに『脳トレーニング』を楽しんでおられます。ヨーロッパではまだです。が、近々あなた達は同じような経験をするでしょう、そして私達は、ヨーロッパの人々が年配者を含めて『脳トレーニング』のソフトを楽しんでくれるだろうという希望をもっています。日本ではそれはすでに現実になっています。『脳トレーニング』と『Nintendogs』から始まり、いまや『おいでよどうぶつの森』が非常によく売れています。始めの売上予測に反して、『森』はその4倍もの売上をたたき出し、発売数週間で売り上げ200万を超えました。

さて、レボリューションについて話しますと、レボリューションは据え置きゲーム機であり、テレビに接続されるわけで、そのテレビはそれぞれの家のリビングルームにあるものです。なので私たちは、ニンテンドーDSが成すことができたこと以上のことを成し遂げたいと思っています。レボリューションをテレビにいつでもつないでおくことを、皆が心地よく思うようにするところまでにしたいですね。

―――東京ゲームショウでのトレイラーには剣で戦うゲームがありました。マスターソードを本体発売の時から振り回すことができるでしょうか?

『The Legend of Zelda: Twilight Princess』はゲームキューブソフトで、ゲームキューブソフトはレボリューションで動かす事が出来ます。レボリューションのコントローラーを利用することで、あなたは恐らく新しい感覚を得ることができるでしょう。ゲームキューブで『Twilight Princess』を遊んだ時と比べても。

―――とてもストレートな質問をさせてください。宮本さんは『Twilight Princess』がレボリューションのコントローラーの機能を使うと言いましたよね?

こういう言い方をさせてください。『Twilight Princess』をレボリューションで遊んだ場合、プレイヤーはレボリューションのコントローラを使って遊ぶことができる、ということです。リモコンの機能を使って、弓矢を放つことができます。
《土本学》
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