人生にゲームをプラスするメディア

【CEDEC 2012】表情認識は次のコミュニケーション手段となるか?

タイトーでON!AIR事業部に席を置く藤井栄治氏は「認識技術の簡易化と活用」と題したセッションをCEDEC 2012初日に実施しました。

ゲームビジネス その他
藤井栄治氏
  • 藤井栄治氏
  • 認識技術の簡易化と活用
  • アジェンダ
  • 2006年の発表
  • コンピューターの役割が変わりつつある
  • 表情は感情を伝える
  • 表情の動きが重要
  • 表情認識
タイトーでON!AIR事業部に席を置く藤井栄治氏は「認識技術の簡易化と活用」と題したセッションをCEDEC 2012初日に実施しました。

藤井氏は以前はスクウェア・エニックスで「ファイナルファンタジー」シリーズのムービーディレクターを担当。その後、タイトーに転籍し、本業はアートディレクターながら、自身でプログラムも書くというハイブリッドな業務をこなしています。今回の発表は直接業務に紐付くものではなく、自身のライフワークとしての取り組みという側面が強いようでした。

しかし表情認識はソーシャルゲームを手がけるON!AIR事業部にとっても意味があるものになりそうです。藤井氏が指摘したのは、元来は効率化・省力化の為に生まれたコンピューターが、今やコミュニケーションの手段として存在感を増しているということです。このコミュニケーションの世界で、表情というのは言語以上に効果的で、世界共通で通用する手段です。プレイヤーの表情の認識と、その表現によって、例えば仮想空間でも今以上のコミュニケーションを実現できるのではないかと考えられます。

藤井氏の用いる表情認識では、まず顔認識を行い、それ以外の部分をマスクし、顔の中から特徴点を抽出。基本形状からの歪みを認識、予め用意されたパターンに当てはめ、それがどのような感情を示しているか数値化するというものです。従来の表情認識ではモーションキャプチャーデータのような特徴点のトラッキングデータを受渡していましたが、それでは転送と処理に大きなコストが必要です。今回のように歪みから感情(笑、怒、平坦)をパーセンテージで数値化して受け渡しを行えば、オンラインゲームや仮想空間のようなネットワーク越しでもやり取りが容易です。

処理負荷は数世代前のPCでも十分にリアルタイム処理できる範囲に収まっていました。顔認識は画像の解像度に依存して負荷が大きくなりますが、表情認識は顔認識をして抽出範囲を狭めるので解像度に依存せずに認識が可能という特徴があります。

デモで藤井氏は表情を認識、それを数値データへと置き換えて、さらにその数値データを元にペンギンのキャラクターに表情付けを行う様子を見せてくれました。ペンギンのモデルは笑、怒といったパターンが用意されていて、数値データの比率によってブレンドして生成しているそうです。人の表情を見事にキャラクターに置き換えることができていて、そのままの技術で、仮想空間のキャラクターの表情を実際にプレイしているプレイヤーの表情と同期させるような事が可能になりそうです。

藤井氏は更に表情認識に音声入力を組み合わせることによって、リップシンクを正確に行い、リアルさを増す手法も考えられると紹介。また、感情を抽出することは、音声合成での声色の表現、感情に合わせたモーション表現、言葉やセリフ、あるいは条件分岐などに活用できるのではないかと指摘しました。コンピューティングパワーの増大やカメラの普及で表情認識にかかるコストは低下していて、それを活かしたゲームというのも絵空事では無さそうです。
《土本学》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

ゲームビジネス アクセスランキング

  1. 不思議な感触!スライムの新商品が登場―メガハウス

    不思議な感触!スライムの新商品が登場―メガハウス

  2. 「キミの心の応援団長」バーチャルYouTuber富士葵が込める想いとはーーキーマンインタビュー

    「キミの心の応援団長」バーチャルYouTuber富士葵が込める想いとはーーキーマンインタビュー

  3. AOU2009、カプコン出展タイトル公開『マリオパーティ ふしぎのコロコロキャッチャー』など

    AOU2009、カプコン出展タイトル公開『マリオパーティ ふしぎのコロコロキャッチャー』など

  4. 腕時計、筆箱…「ポケモンバトル◆ヒーローズ」のグッズ新登場

  5. Mobageと共に世界を取りに行く・・・DeNAサポート事例の場合

  6. 【BitSummit】Q-Games吉田謙太郎氏基調講演「Q-Gamesの歴史」抜粋

  7. ポケモンが現実世界と仮想世界を繋いでいく、20年目の挑戦・・・株式会社ポケモン代表取締役社長・石原恒和氏インタビュー

  8. 【DEVELOPER'S TALK】手のひらサイズでも「ACE」級、iPhoneアプリ『ACE COMBAT Xi Skies of Incursion』開発チームのチャレンジ

  9. 犬山紙子さんインタビュー―家でゲームが待っている、仕事終わりのご褒美感【リモートダウンロード活用術】

  10. 「2021年最も活躍したと思うゲーム実況者は?」第1位に輝いたのはあの“インターネットヒーロー”!

アクセスランキングをもっと見る