
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下「SIE」)は2019年3月20日(水)に発売を予定しているロボットトイ「toio(トイオ)」の体験会を行いました。まったく新しいインタラクティブエンタテインメント体験を提供する、ということで期待が高まる「toio」。体験会では開発者や制作者も登壇し、その仕組みや魅力について語りました。
◆「toio」開発秘話
体験会に先立ち、SIE T事業企画室 課長 (toio開発者) 田中章愛氏が登壇。「toio」発売までの経緯について語りました。

2016年、コンピューター開発研究所のアンドレ氏、カメラのソフトウェアエンジニアであった中山氏、そして田中氏の3人でソニー シードアクセラレーションプログラムによって事業化を始めた「toio」。現在はSIEに移り、PSの開発・販売のノウハウを活かしての事業展開を行っているとのことです。

「toio」は「枠にとらわれない遊びをするうちに、遊び自体を作り出す体験を提供することができるプラットフォームである」と田中氏。プロトタイプの制作は2012年にまで遡ります。200人以上の子供たちにプロトタイプで遊んでもらい、改良を加えてきたそうです。2018年1月の先行発売ののち、「自分でプログラムを作りたい」という声が上がったため、自作プログラムの追加も実装されました。

◆クリエイターとのコラボにより提供される遊び

toioはクリエイターとのコラボレーションにより、本体発売と同時にいくつかのオリジナルタイトルが発売されます。バラエティキット「トイオ・コレクション」は、toioの魅力が詰まった5つの遊びを提供するキット。toio入門セットとも言えるでしょう。「トイオ・コレクション」を企画・デザインしたwhateverクリエイティブディレクター 谷口恭介氏は、「toioはキューブ型のシンプルなデザイン。シンプルだからこそアイデアが尽きませんでした」と語ります。

「工作生物 ゲズンロイド」を企画・デザインしたユーフラテスの映像ディレクター 佐藤匡氏は、「田中さんからtoioの説明を受けて「すごいメディアができてしまった」と思いました。我々に面白いものができるのか、と思ったけど2週間くらいで面白いものができてしまいました(笑)。10年間の実績の集大成のコンテンツになったと思います」と語ります。画面の中でモノが動くのではなく、実際にモノが動くことを体験してほしい、と佐藤氏。

東京大学大学院情報学環准教授である筧康明氏もtoioの研究開発に協力しており、画面の外でデジタルを使って豊かな体験を作っていくtoioのコンセプトに共感をしたとのこと。「toioがあるから身の回りのあらゆるものが面白く見え始める。toioにはそういう魅力がある」と筧氏。今後もtoioを通じて新しい遊びや未来のコンピュータとの繋がり方を模索していくとのことです。

SIE プラットフォームプランニング&マネジメント 統括責任者の西野秀明氏は、「ネットワークを通じて多くのユーザーにプログラムを配布し、均一な体験を楽しめるようにしたい」と今後の予定について語ります。toioプロジェクトチームがSIEに編入されてから約1年、SIEでは主にPSを開発してきたエンジニアと一緒に発売の準備を進めてきたとのことです。「PSを中心に展開してきたSIEの知見をtoioに活用し、新しい市場を作ることを目標としている」と、意気込みを語ります。

◆実際に触ってみた
というわけで実際に触ってみました。まずtoioとは、独自のセンサーを用いておもちゃの向きや位置をコンピュータの中の仮想モデルに取り込み、仮想空間の中で設定したルールに従ってモーターをコントロールするロボットトイです。言葉にすると難しい話なので、実際にどのように動いているか見ていきましょう。

「トイオ・コレクション」のひとつの「フリームーブ」。自由に動かして遊ぶことができる、基本中の基本のプログラムです。

円型のコントローラーを使ってキューブを動かします。とっても軽く、上下左右の動きもシンプルなので、子供が長時間持っても疲れないでしょう。

キューブにレゴブロックを載せるとキャラクターに早変わり。実際に遊ぶ際には好きな道具で好きにカスタマイズして遊ぶことが可能です。自由に動かしていたところ、机に貼られたうずまきのシールに乗ったとたんにスピンを開始。キューブがシールの絵を読み取り、あらかじめプログラムされた動きを実行したようです。ほかにも「ショック」の絵に乗るとガクガクと震えてしばらく制御不能に。ほんとうに生きているみたいです。

toioのドック。キューブ2つの格納が可能です。画面には現在遊んでいるゲームの情報が表示されています。ゲームによっては音声でいろんな情報を伝えてくれます。

「トイオ・コレクション」のひとつの「リズム & ゴー」。マットの上にキューブを置くと、絶対値センサーが働いて自分で中央に移動してくれます。めちゃくちゃ優秀!


ドックからの指示に従い、指定された色のマスまでキューブを移動させます。行動指定用マットの矢印をキューブでタップし、行きたい方向を指定。するとキューブがその指示の通りに動いてくれます。お題をクリアするごとに難易度が上がり、行動指定の時間が短くなっていくので、思った以上に難しい! シンプルながらも奥深いゲームです。

見た目のインパクトがでかい「工作生物 ゲズンロイド」。この目玉は一体……!?



本に記されたマークにキューブをタッチさせると、キューブがめだま生物に早変わり。

めだま生物になったキューブは捕食対象のエサムシを追いかけます。絶対値センサーによって一定の距離を保ち追いかけっこをするキューブたち。とてもカワイイです。ちなみにエサムシをめだま生物に向けさせるとめだま生物はピタリと止まります。



シャクトリーのプログラムを読み込ませて、紙で繋げると……尺取虫のような動きをはじめます。絶対値センサーによりマットの上でのみ行動するので、行方不明になる心配はありません。

コントローラーを用いて遊ぶプログラムも。


目標を補足して、ボタンを押して捕獲! このように、生き物をモチーフにした動きが幾つも用意されていて、すべて体験するたけでも十分に楽しめそうです。

「GoGo ロボットプログラミング~ロジーボのひみつ~」は絵本を読む感覚でプログラムが学べるソフトウェア。


紙で行動プログラムを組み、キューブを歩かせてプログラムを読み込み、絵本の迷路の上で実行させます。物語を体感しながらプログラムの三つの基本構造の「順次、分岐、反復」が学べてしまうというわけ。なんという恐ろしい英才教育プログラムでしょう。
このほかにも魅力的なプログラムが体験できましたが、全てに言えることは「創意工夫次第でさらに楽しい体験ができそう」ということです。toioのキューブはシンプルだからこそ何にでも見立てることが可能です。基本のキットでその動きの面白さを知ったら、そこから新たな楽しみ方を見つけて創意工夫し、それをさらに発展させる……そういった無限の遊びの可能性を秘めたロボットトイであると感じました。
今後、体験会なども積極的に行っていくとのことなので、ぜひ実際に触れてその面白さを体験してみてはいかがでしょうか。