ゲームセンターにて絶賛稼働中の人気アーケードゲーム『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 オーバーブースト』。本作は、人気ロボットアニメ「機動戦士ガンダム」を題材にした対戦ゲーム『ガンダムvs.』シリーズの最新作です。
2vs2のチームバトルでお互いの戦力ゲージを削り合うシンプルな勝敗システムと、機体ごとに設定された「コスト」が生み出すチームの組み合わせ、スピード感溢れる爽快なバトルなどなど、1つの対戦ゲームジャンルとして確立された人気シリーズです。
各地のゲームセンターでは店舗大会が開かれることも多く、2024年には賞金総額800万円のeスポーツ大会「GGGP2024(ガンダムゲームグランプリ2024)」も開催予定となっています。そんな本シリーズは「機動戦士ガンダム」のIPに相応しい長い歴史を持ちます。
対戦ゲームとして、20年以上の歴史を誇る本シリーズ。筆者も小学生のころ『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』や『機動戦士Ζガンダム エゥーゴvs.ティターンズ』を近所のゲームセンターでプレイし、同学年に人気のあったアーケードカードゲーム『ムシキング』そっちのけで“どハマり”していました。
ゲームキューブの『機動戦士ガンダム ガンダムvs.Zガンダム』を購入した際は、狂ったように遊び続ける夏休みを過ごして、宿題を夏休み終了前日に半べそ気味で終わらせようとしていた記憶がいまだに焼きついています。
このタイトルでは隠し機体に「ZZガンダム」が登場するのですが、それを練習するため毎週土日の朝6時ごろに起きては大音量でプレイしていました。するとある日、母親から「ガンダムの動く音がうるさ過ぎて頭がおかしくなる」との苦情が……。当時はそれだけ、のめり込んだものです。
さて、ここ半年以上筆者はさまざまな中国ゲームアプリをプレイしている中で、どうしても遊びたかったゲームが1つありました。それが、今回取り上げる『ガンダム争鋒対決(敢达 争鋒對决)』です。
※上記作品名及び以降の文章では、システムの都合上本来簡体字で表記すべきところを繁体字で表記しています。
本作を一言で言い表すのであれば、まさしく“スマホ版「エクバ(※)」”。そう、中国ではスマートフォンで『ガンダムvs.』シリーズが遊べてしまうのです。操作性はスマホ向けに調整されていますが、マニアックな機体が豊富に登場し、本家シリーズにもまだ未参戦な機体が多数収録済みという、ガンダムファン泣かせな日本未上陸アプリです。
ゲームバランスについてはめちゃくちゃ言いたいことがありますが、ひとまずそれは後にして、本稿では本家シリーズにも負けない本作の魅力をご紹介します。
※ 『エクバ』=『機動戦士ガンダム エスクトリームバーサス(以下、エクバ)』の略

◆まさか本家にもいないこんなマニア向け機体が使えるなんて、最高すぎる!

今や対戦ツールとしてガンダムをよく知らない人ですらプレイしている『ガンダムvs.』シリーズですが、このシリーズの醍醐味は、なんといっても歴代シリーズのモビルスーツが操作できる点にあります。
かつて本シリーズは、初代『機動戦士ガンダム」「機動戦士Zガンダム」の“宇宙世紀”を題材とした作品から『機動戦士ガンダムSEED』の“コズミック・イラ”を題材にした作品まで、世界観のテーマに合わせた機体が主役機、ライバル機、量産機と勢揃いでした。しかし近年はクロスオーバー作品の『エクバ』が主流となり、かつての量産機級の機体にスポットライトが当たることも減ってきています。
ただ、クロスオーバー作品でもシリーズを重ねるごとに機体数が追加。そのため、結果的に有名な機体のごく一部が参戦できている状態が続いているのです。それでも「ドム」や「リック・ディアス」の類は未実装です。
それが本作においては、そのどちらもプレイアブル機体として登場しており、しっかり操作することができます。独自のラインナップを採用していることから、逆に本家にいて今作未参戦な機体も存在するのです。



翼を生やしたりファンネルを飛ばしたり、極太ビームで大暴れする主役機・ライバル機に混ざって、しれっと「自分、初めからいましたよ?」な澄まし顔でプレイアブル化しているマニアックな機体も盛りだくさん。今回は、中でも筆者がワクワクした参戦機体たちをご紹介しましょう。
■【ガンダムTR-6[ハイゼンスレイII・ラー]】

「ガンダムTR-6[ハイゼンスレイII・ラー]」は、小説および漫画作品「ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに」に登場する機体であり、無数に存在する換装バリエーションの中の1体です。
『ガンダムvs.』シリーズにはもちろん未登場の機体で、「ガンダムTR-1[ヘイズル改]」と共に参戦しました。ハイゼンスレイII・ラーはモビルアーマー(以下、「MA」)形態への可変機構まで再現するこだわりが素晴らしく、対戦中に無意味な変形を繰り返してしまいます。



豊富な武装とワイヤーで射出できるクロー・アームからの多角的な攻めが搦め手になり、絶え間ない奇襲攻撃が得意です。ただし武装が多いため、レバー入力で積極的に武器を使い分けなければ、何かしらの武装が腐ってしまいます。MA形態の武器も非常に強力なので、こちらに対するロックオンが外れているときにでもガンガン狙ってみたいですね。
格闘戦はかなり苦手で格闘攻撃の種類も少なめです。接近戦に持ち込まれるとほぼ逃げるしかなく、味方の援護を待ったり、MA形態で上手く高飛びしたりなど、ときには“逃げるスキル”が求められる機体だと感じました。
■【ガンダムデルタカイ】

「ガンダムデルタカイ」は、漫画「機動戦士ガンダムU.C.0094 アクロス・ザ・スカイ」、PS3用ソフト『機動戦士ガンダムUC』などに登場した機体です。「n_i_t_r_o(ナイトロ)」と呼ばれるシステムでパイロットを人工的なニュータイプ、いわゆる“強化人間”へ書き換えてしまう恐ろしいガンダムです。
今作では残念ながらナイトロ発動時に発生する機体各部位の青白い炎まで再現されていません。個人的には覚醒中だけでも良いので、そのエフェクトが欲しかったところです。



デルタカイもハイゼンスレイII・ラーと同様に可変機構を持った機体になります。格闘戦はあまり得意な方ではありませんが、ビームサーベルやキックを用いた手早く終わらせられるもので、状況次第では振りに行っても良いでしょう。
この機体の強みは背中に2基搭載されたプロト・フィン・ファンネルの使い勝手です。発射されるビームは拡散するので、至近距離から直撃した相手には大ダメージ、たとえ離れていても小粒のビームで多少の被弾をさせられます。また、中距離では狙撃タイプのビームライフル、少し遠めの敵にはハイ・メガ・キャノンといった具合に、純粋な射撃戦でも強力です。
MA形態の変形を活かしつつ、強力なビーム兵器での一撃離脱を得意とするので、相方が前線を維持しやすい格闘機体だと、かなり動きやすい印象を受けました。現在は筆者が愛用する内の1機となっています。デルタカイも『ガンダムvs.』シリーズ未参戦のガンダムです。
■【白雪姫前奏曲(ウイングガンダム スノーホワイトプレリュード)】

こちらは「新機動戦記ガンダムW Frozen Teardrop」に登場した機体「白雪姫(ウイングガンダム スノーホワイト)」を、メカニックデザイナー・カトキハジメ氏が、ホビーブランド「GUNDAM FIX FIGURATION METAL COMPOSITE」向けに全身描き下ろしたというものです。
その名も「白雪姫前奏曲(ウイングガンダム スノーホワイトプレリュード)」。厳密には原作に登場していない機体ですが、今作ではなぜか参戦することになりました。もちろん本機も『ガンダムvs.』シリーズには未参戦です。


いい加減しつこいようですがこの機体も変形します。強力な主兵装のバスターライフルをバカスカと撃ちまくり、変形して小賢しく逃げ回っていると思いきや、突然の変形解除からバスターライフル2丁を放ちつつ、ぐるぐる回りまくる厄介極まりない機体です。
しかも所作一つひとつがエレガントで、白く綺麗な羽がめちゃくちゃ舞い散ります。今作のプレイアブル機体の中ではもっとも美しい機体といえるでしょう。


格闘戦もそつなくこなせるうえ、全体的に高火力。さらに実弾のマシンキャノンをばら撒きながら、左右後ろへと高速移動する特殊な動きが可能です。覚醒技は高所へ飛翔した後に複数の巨大な爆風を下に発生させるものですが、使われると避けるのがかなり難しく、強引に使用してダメージを稼ぐといった雑な使い方ができます。
白雪姫前奏曲も一撃離脱を得意としますが、攻撃が全体的に痛いので敵チームに与えるプレッシャーは相当なものです。戦場を華麗に撹乱し、優雅に敵を圧倒できる機体といえるでしょう。
◆ゲームバランスは正直「めちゃくちゃ」。でも、楽しい!

ゲームバランスは正直めちゃくちゃです。
主要なランクマッチモードでは、機体レベルと凸数で露骨に差が出てしまう仕様なので、有り体にいって「Pay to Win」です。対戦ゲームとしては許されるべきものではありません。このバランスで仮に日本国内でリリースすれば間違いなく国内ユーザーたちの反感を買うことになるでしょう。
bilibiliでは大不評もいいところで、課金して遊び込んだ筆者から見てもゲームバランスについては擁護できません。この点に関しては非常に残念ではありますが、あくまで対戦ツールではなく“キャラゲー”としてのスタンスなのだと思われます。

日本では『ガンダムvs.』シリーズが対戦ゲームの定番として長く人気を保ち続けていますし、PS4用ソフト『機動戦士ガンダム EXTREME VS. マキシブーストON』も盛況だと耳にします。スマートフォンで『エクバ』をプレイしたいユーザーも中にはいるでしょうが、やはり対戦ツールを求めているのであれば、本家『エクバ』をプレイするべきです。
しかし、今作ならではの魅力もたくさんあります。本家では実装されていないプレイアブル機体の数々、スマートフォンでスタミナも関係なくいつでも遊べるという利便性、なにより機体ごとにコストが設けられていないことなど、悪いことばかりでもないのです。


本家『エクバ』では強力な機体ほど高コストなため、倒された場合の損失が非常に大きいです。マッチング時にチームを組んだ相手に気を遣ってプレイするケースがほとんどなので、中には我慢して中間コスト帯の機体を選択する人もいると思います。
ですが本作はコストに関係なく、撃破回数が勝敗条件になっている関係で、好きな機体を好きなだけ使用することができます。「ザクII」が撃破されようと「ガンダム」が撃破されようと損失は同じなのです。

この仕様のおかげで好きな機体を自由に選択できるため、気がつけば年末年始に積みゲーを順次消化していかねばならぬという状況の中、ランクマッチにひたすら潜り込み「少校(少佐)」まであっという間に登り詰めてしまいました。
負けるとレートは下がりますが降格もしないので、ヘタクソな筆者でもそこそこのランク帯にいけて嬉しい限りです。

なお、対戦モードは複数あって、特定の時間帯でしか参加できないコンテンツもあります。
特に決められた機体で戦うものは機体の性能差が出にくく、比較的バランスが良好だったと思います。そのほかプレイヤー3人で挑戦するボスバトルや、プレイヤーデータと戦ってランキングを伸ばすバトルなど、遊べるモードはそれなりに用意されていました。

ゲーム内のテキストが繁体字で読めなくてもキャラクターボイスは日本語で、ゲームシステムの基本は『ガンダムvs.』シリーズとほとんど同じ。なんだかんだ手に馴染む対戦ゲームとして、筆者は相当熱中できています。
これからも本家に登場していない機体の実装が楽しみです。今作はPayPalを使えば日本ユーザーも簡単に課金できてしまいますが、極力負担にならない程度で欲しいモビルスーツを少しずつ集めていければなと思います。