マイクロソフト・ゲーム・スタジオによる「Seven (Or So) Techniques for Writing a Moral Game」というセッションでは、プレイヤーの記憶に残る物語をいかに作るかが議論されました。これは何も芸術的な観点の話ではなく、プレイヤーに深い印象を与えたゲームは記憶にも残り、結果的にビジネスにつながるのです。
また「Tastes Like Chicken: Authenticity in a Totally Fake World」というセッションでは、フィクションであるゲームに必要なリアリティについて説明されました。ゲームに必要なのはリアルなものではなく、プレイヤーやハリウッドが考えるリアリティであるといいます。そのため、特殊部隊を表現するには長い移動時間、長時間の斥候などは省略され、映画のようなシークエンスに仕上げる必要があります。
さらに「Creating Immersive Narrative Games Without Big Budgets or Resources」というセッションでは、大きな予算を用いずに優れたナラティブを持つゲームの制作法が論じられました。実際に低予算で開発された『ICO』や『ポータル』、『Journey』といったゲームは、ナラティブの部分に力を入れ、プレイヤーに記憶に残る経験を与えて来ました。IGFでアワードに輝いた『FTL:Faster Than Light』や『Thomas was alone』といったインディーゲームもまた、ナラティブという点で傑出しており、開発予算が小さいインディーゲームこそ、ナラティブに注目すべきであり、ゲーム経験を高めるためのコストパフォーマンスが高いそうです。
またUbisoftによる『アサシンクリード3』についてのセッションでは、ナラティブデザイナーとレベルデザイナーのコラボレーションのあり方が紹介されました。セッションによれば、何度も話し合うこと、そして何度もシナリオを書き直すことが重要であり、「作者ではなくナラティブデザイナー(not author but narrative designer)」ことが強調されました。また「Getting a Team on Board with Narrative Design」というセッションでも、ナラティブデザインを行なうための組織づくりやワークフローが紹介されたそうです。
一方、ナラティブを受け取るプレイヤーの背景を考察するセッションも行われました。「Applying the 5 Domains of Play」というセッションでは、256パターンのプレイヤーの行動が分類されました。ゲームに対するプレイヤーの意識は様々で、対戦型のマルチプレイが好きな人もいれば、ソロプレイが好きな人も多く、セッションの参加者の嗜好も様々であったそうです。マイクロソフト・スタジオによる「Secret Sauce:How Diversity in Your Game Narrative」というセッションでは、北米のゲーマーの傾向を分析して、女性キャラクターが増加していること、次に流行るのはヒスパニック系のキャラクターであることなどが指摘されました。