
2024年11月8日に発売された『野狗子: Slitterhead』は、1990年代の架空都市「九龍」を舞台に、人間の脳を貪り食う怪物「野狗子」と人間に憑依する「憑鬼」の戦いを描いたバトルアクションアドベンチャーゲームです。
初代『サイレントヒル』や『SIREN』を手がけた外山圭一郎氏の最新作にして、自身の手で立ち上げたゲーム開発会社「Bokeh Game Studio」のデビュー作でもあります。
『野狗子: Slitterhead』の魅力は、NPCに憑依するゲームシステムです。これは、憑鬼が九龍の住人たち(NPC)や「稀少体」と呼ばれる味方の人間に乗り移ることで、キャラクターの移動・戦闘が可能になるというもの。
本作が発売されてから、SNSなどでは憑依システムを評価する声を多く見受けられました印象でした。特定の人物ではなく、モブキャラクターを操作できる点は、昨今のアクションアドベンチャーゲームにおいて珍しいですよね。
筆者も本作をプレイしてみたところ、“あること”に気づきました。そこで本稿では、『野狗子: Slitterhead』の憑依システムにフォーカスし、筆者が感じた面白さについて解説していきます。
■憑依システムの面白さは「ロールプレイ」にあり!
憑依システムを駆使した戦闘や探索も面白いのですが、筆者が感じた特徴であり魅力は「ロールプレイ」の要素です。
ゲームは「九龍を探索して野狗子を見つけ出し、討伐する」という流れで進行します。そして、ターゲットとなる野狗子の発見・討伐には、九龍の住人ならびに稀少体の協力が必要です。



野狗子との戦闘では、住人たちの協力が不可欠です。プレイヤーは複数のNPCに乗り移りながら、敵にダメージを与えていきます。
なかでも、戦闘能力も体力も高い稀少体が便利なのですが、やられそうになったら近くの住人に憑依したり、住人を囮にしたりするなど、多彩な戦い方も可能です。


しかし筆者は、主役っぽい稀少体たちではなく、あえて九龍の住人でボスに挑んでみるという唯一無二の楽しみ方を見出しました。SNSでも話題になりましたが、パンツ一丁のおっさんやつっかけサンダルを履いたおばちゃんなど、個性豊かな住人たちを操作して強敵に挑める点が本作の面白いところです。


脇役だろうと、この瞬間だけゲームの主役になれるわけです。憑依できるキャラクターは、全員主役の資質があると言っても過言ではありません。

そんなこんなで、九龍の住人たちをかっこよく魅せるために憑依を続けた結果、彼らに愛着が湧くようになりました。外見も性別も異なる住人たちを操作していると、いつしか彼らと一体化したような気分になるのです。憑依を重ねれば重ねるほど、九龍の住人らしく振る舞おうという意識が芽生えてきました。




こうした憑依システムの面白さに気づいてからは、探索がさらに楽しくなりました。住人になりきって街を探索していると、まるで思い出深い故郷に戻ってきた気分に浸れるからです。ただ単に憑依するだけでなく、ひとりひとりの背景を想像するとより没入感が増すのでおすすめです。
このように、憑依システムは『野狗子: Slitterhead』の世界に没入させる役割を果たしていると言っても良いでしょう。九龍の住人たちになりきることで、深みのある体験が味わえるようになるので、ぜひどっぷり浸って遊んでみてください。